鋳物の話

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鋳鉄と鋳鋼の違い

2020/11/02

鋳鉄と鋳鋼はどちらも同じ鉄系の材料ですが、その違いについてご存知でしょうか? 一番大きな違いは、黒鉛が存在するかどうかです。見た目では判別するのが難しいですが、顕微鏡で観察するとその差が分かります。鋳鉄は黒鉛が存在するのに対して、鋳鋼には存在しません。図1で、黒く見えるものが黒鉛です。片状や球状の黒鉛があることが分かります。学術的には、炭素を2.1%以上含むものを鋳鉄、2.1%以下のものを鋳鋼と呼びます。溶けた鉄には、炭素が溶け込むことができます。炭素は2.1%程度までは鉄に溶け込むことができますが、それ以上になると、固まるときに余剰分の炭素が図1に示すような片状や球状の黒鉛となって出てきます。そのため、2.1%を境として鋳鉄と鋳鋼が分かれています。ただし、チルと呼ばれる硬くて脆い鋳鉄には黒鉛が出ないものもあります。
鋳鉄についてもう少し詳しい話をしますと、図1に示したように、一般的な鋳鉄では中に含まれている黒鉛組織の形により、FC(ねずみ鋳鉄、片状黒鉛鋳鉄、ズクと呼ばれます。)FCV(CV鋳鉄と呼ばれます。)、FCD(球状黒鉛鋳鉄、ダクタイル鋳鉄と呼ばれます。)などに分類されます。これらの鋳鉄はそれぞれ異なる特性を持ち、強度にも差があります。強度の指標である引張強さで比較すると、FC < FCV < FCDという傾向になります。JIS規格では主に引張強度と伸びの値によって、グレードが分かれています。
一方、鋳鋼は図1に見られるような、強度の低い片状や球状の黒鉛を含まないので、黒鉛がない分鋳鉄に比べて全般的に強度が高く、伸びも高くなります。種別としては、炭素以外の合金元素を含むかどうかによって普通鋳鋼(炭素鋼鋳鋼)と合金鋼(合金鋼鋳鋼)に分けられます。普通鋳鋼は、炭素の含有量により低炭素鋼、中炭素鋼、高炭素鋼に分類されます。普通鋳鋼は、炭素量が多いほど強度が高くなり、伸びが低くなります。一方、合金鋼は添加する合金元素の量により、更に低合金鋼と高合金鋼に分かれます。合金鋼は要求される特性を満たすために、様々な元素が添加された鋳鋼です。鋳造されたら、そのまま使用されることが多い鋳鉄に対して、鋳鋼では焼きなましや焼きならしといった熱処理が必須であり、場合によっては焼入れや焼き戻しなどの複雑な熱処理を施して既定の強度を得る材種もあります。インゴットの鋳鋼材料を高温で叩いたり、伸ばしたりしたものは、鍛造品になります。人類の最初の鉄との関わりは、鍛造であったようです。鋳鋼についても鋳鉄と同様にJIS規格があり、普通鋳鋼である高合金鋼であるステンレス鋳鋼まで、各種材質が規定されています。
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図1 鋳鉄と鋳鋼のミクロ組織比較